MOAMOA. 事業者インタビュー
奥ゆかしさを纏う、美意識由良未来さんのフェムケアづくり
YURA MIKU — 由良未来さん

INTRODUCTION
「小さな声でも、分かるよって言ってあげられるようなブランドを作りたい」。そう話すのは、セルフプレジャーアイテムやインティメートソープを手がける由良未来さんです。
自身の経験を語りながらも、ものづくりへの姿勢はとても率直。「求められているのに、まだ世の中にないものをつくる」という視点から、商品の見た目や名前にまで、使う人の気持ちを重ねています。由良さんが耳を傾けてきた女性たちの声と、そこから生まれた商品について伺いました。
小さな声から、生まれたブランド
MOAMOA.まずは、これまでのお仕事や、今の事業を始めたきっかけを教えてください。
由良もともとは化粧品系の専門学校で学び、エステティシャンとして働いていました。フランスの学校で学んだり、現地のサロンで働く体験をしたこともあって。若いうちに、美容や性に対する意識の違いに触れる機会があったんです。
その後、自分が結婚して一緒に暮らすようになって、思い描いていた夫婦生活とは違うなと感じることがありました。私にとって一番の課題は、話し合いができなかったことだったんですね。
MOAMOA.外から見ただけでは、その人の気持ちは分からないですし、話せる場所もなかなかないですよね。
由良そうなんです。そばにいるのに孤独、ということもある。シングルマザーになったことをきっかけに、もし同じような気持ちを抱えている人がいるなら、小さな声でも「分かるよ」と言ってあげられるブランドをつくりたいと思いました。
自分の気持ちを、大きな声で言う必要はないと思っているんです。静かに自分のことを大切にしたい人にも寄り添える、そういうブランドにしたいですね。

求められているのに まだないものをつくる
MOAMOA.その想いは、商品づくりにどうつながっていったのでしょうか。
由良私は、シンプルにビジネスとして考えているところもあるんです。求められているはずなのに、まだ世の中にないと感じたから、つくろうと。
最初のきっかけは、セルフプレジャー用のおもちゃでした。以前の商品は、私にとっては買いづらくて、売り場の前を通るだけでもドキドキしてしまう。パッケージも強さや刺激を強調するものが多くて、「私はそれを求めていないのに、誰が求めているんだろう」と疑問だったんです。
でも、それが私一人の意見かもしれないと思って、1,000人にアンケートを取りました。人には言いづらかった悩みや、商品に求める機能、デザイン、これまで何となく嫌だったことなどを聞いていくと、「みんなも思っていたんだね」と感じる声があった。その声を商品に落とし込んでいきました。
見た目やしまい方にもこだわりを
MOAMOA.具体的には、どんなところを大切にしていますか。
由良まずは見た目です。清潔感があって、上質で、使う前からワクワクできるものにしたかった。機能だけでなく、パッケージも大切にしています。
それから、「家にあるだけで落ち着かない」という小さな不安もあるんです。そういう気持ちをケースで守ってあげられないか、と考えました。
名前も同じですね。おもちゃには「ルーム201」と、部屋番号のような名前を付けました。女性同士のこそこそ話の中で、わざわざ生々しい名前を言う必要はないと思ったんです。そんな細かいところまで、使う人の気持ちに寄り添いたいですね。

一緒に使おうと言えるフェムケアソープ
MOAMOA.フェムケアソープについても教えていただけますか。
由良パートナーにケアしてほしいと思っても、直接は伝えにくいことってありますよね。それは女性から男性へだけでなく、男性から女性へも同じだと思うんです。
だったら、自分のケアのために使うものを「一緒に使おうよ」と渡せたらいいなと。女性専用にするのではなく、男女ともに使えるインティメートソープとしてつくりました。
相手に言わないことを、思いやりだと思う人もいる。その気持ちを否定したいわけではなくて、言いづらさを抱えたままでも、ケアを共有できる方法を用意したいんです。
フェムケアソープの名前は「ミュルミュール」。「小さな声で」という想いを込めています。自分の身体のことを、誰かに少しだけ相談してみようかなと思える。そんなきっかけになれたらうれしいですね。

涙を流して話してくれた人たち
MOAMOA.これまでの活動で、特に印象に残っていることはありますか。
由良アンケートをきっかけに、「話してみたい」と連絡をくださる方がいるんです。その中には、ぽろぽろ泣きながら「寂しい」「孤独だ」と話してくれる女性もいて。
パートナーがいて、子どももいて、周りからは幸せそうに見られている。でも本人は、大切にされていない、満たされていないと感じている。その気持ちを、今まで誰にも話せなかったという方もいらっしゃいます。
MOAMOA.暮らしに不自由がなさそうに見えることと、心の中の気持ちは別なんですよね。話せる場所も、なかなかないのかもしれません。
由良そういうお話を聞くたびに、打ち明けてくれてうれしいと思うのと同時に、小さな声でも自分の気持ちを話せる場所が必要だと感じます。女性の内側にある気持ちを、そっとほどいてあげられる存在になりたい。その想いが、少しずつ確かなものになっています。
奥ゆかしさも 自分の気持ちも大切にしたい
MOAMOA.これから挑戦していきたいことも教えてください。
由良海外展開ですね。日本製のフェムケアを、もっと海外に届けていきたいです。フィリピンではすでにサロンで取り扱っていただいていますし、アゼルバイジャンでのイベントにも商品を持っていっています。
私が大切にしたいのは、日本の女性の「奥ゆかしさをまとった美意識」なんです。以前、「日本の女性は奥ゆかしいから、こういうものは使わないよ」と言われたことが何度もあって。でも、奥ゆかしいから欲求がないということではなく、奥ゆかしいから買えなかった、立ち止まって選べなかった、という人もいると思うんです。
献身的で、我慢強い女性になりたかった、という気持ちも分かるんです。でも、そうできない自分に葛藤を抱えることもある。その気持ちまで含めて、「分かるよ」と包み込めるようなブランドになりたいですね。
自分を大切にする方法は その日によって違っていい
MOAMOA.最後に、MOAMOA.の読者へメッセージをお願いします。
由良セルフプレジャーやフェムケアは、自分を大切にすることともつながっていると思います。でも、私自身は「サクッとしてサクッと寝たい」という日もあるんですよ。
自分を丁寧に大切にしたい日もあれば、そういう日もある。一人の中にも、いろいろな気持ちが混在しているんです。人によっても捉え方は違いますし、何が正しいと決めつける必要はないと思っています。
外からつくられた「女性はこうあるべき」というイメージに縛られず、自分を大切にして生きてほしい。「みんないるからね」という気持ちで、女性であることを楽しんでほしいなと思います。
